夏期講習から八ヶ月。

進学先の専門学校にも
無事に受かった。

両親も秋央さんも喜んでくれた。

月日が経つのは
早いもので今日は卒業式。

担任が一人一人の名前を呼ぶ。

全クラスの名前を
呼び終わったところで
校長先生が秋央さんにマイクを渡した。

在校生・卒業生・保護者
教師達全員がざわつき始めた。

『冬彩、僕と結婚してください‼』

え!? 嘘!?

皆が私を見てるけど、
そんな事は気にならない。

マイクを渡した校長先生だけは
秋央さんの隣で笑っていた。

状況から察するに校長先生は
最初から知っていたのだろう。

「枦川さん」

校長先生に呼ばれ壇上に向かう。

今日二度目。

『冬彩、もう一度言います。
僕と結婚してください』

何時も着てる白衣の
ポケットから取り出したのは
明らかにジュエリーボックスだった。

渡された箱を開けると
中に入っていたのは
私の誕生石が輝く指輪。

『受け取ってくれますか?』

断るなんて選択肢は
初めからないに決まっている。

『ご両親に挨拶する前に
プロポーズしてしまいましたが
許してくださいね』

おどけたように言う秋央さんが
少し可笑しかった。

『私でよければ、宜しくお願いします』

箱から指輪を取り出し、
左の薬指に嵌めてくれた。

その瞬間、何処からか
拍手が聞こえてきた。

校長先生も笑顔で拍手してくれた。

「枦川さん・愛徳先生おめでとう」

今日は最高の卒業式。

大好きな彼氏にプロポーズされた日だから。

この先に待ち受けている難題は
山盛りだけど、二人でなら
きっと乗り越えられる。