「えっ。小林優斗のファンを止める?」

みゆきと出かけてから一カ月くらい経ったある日のこと。

小林君とは話せないまま日にちが経って、季節は秋がだんだん進んでいる日。

お昼休みの教室でお弁当箱を片づけながらみゆきに自分の気持ちを伝える。

先にお弁当箱を片づけていたみゆきはお茶を飲むのを止めて、身を乗り出すように私に顔を近づけてきた。

「どうしたの? もしかして一緒に出かけた日曜日にあの人と会ったから?」

ぼかして言うみゆきに頷いて話を続ける。

「話したらやっぱり違う人なんだって思ったし、ずっと二人を重ねるのはどっちにも失礼かなって思って……」

「香織がそう決めたんならいいと思うけど、いきなり止めたら寂しくならない?」

「うーん、ちょっとは寂しいけど慣れると思う。今まで雑誌とかありがとう」

「ううん。そのことなら気にしないで。わたしは応援してるからね」

「ありがとう」

今は席を外していて空席になっている小林君の机のほうを見てみゆきが優しそうに柔らかく笑う。

詳しく言うと優斗君に会った日から優斗君の優しそうな笑顔を見ても小林君の笑顔が重ならなくなったっていうことで。

優斗君の笑顔を間近で見られたことが大きいと思う。

いまだに小林君とは話せなくて不安ばかりだけど、誤解だけは絶対に解きたいから。