ケータイ小説 野いちご

王道恋愛はじめませんか?

恋の境界線




――あれから数週間。

ShineのCM撮影から時が経ち、ようやく社内の雰囲気も通常に戻りつつある頃。


『日光かぁ~!私、日光行くの、初めてなんですよね~!』


昼休みの社員食堂で、チキン南蛮定食を目の前に、城田ちゃんがキャッキャッと楽しそうに話題を持ちかける。

そんな城田ちゃんの正面に座っている私は、今日も手作りのお弁当を広げていた。


「あ…そっか。城田ちゃん、去年は参加してなかったんだっけ?」


卵焼きを箸でつまみつつ問いかければ、城田ちゃんは勢いよく首を縦に振った。


『そうなんですっ!』


参加するつもりだったのに、身内の危篤によって急遽不参加になってしまったことを不満気に話しはじめる城田ちゃんに、私は苦笑いしか返せない。

話の中心は、今月末に行われる社員旅行だ。

毎年毎年飽きもせず、日光にある老舗旅館に2泊3日宿泊し、部署を超えた社員同士の親睦を深めることを趣旨としている。

――が、そんなものは建前で、参加者たちは社員旅行を規則の緩い修学旅行のようにとらえている者も少なくない。

それもそのはず。

毎年行先も変わらず、観光ルートも変わらない社員旅行。

数年も参加すれば当然飽きがくるし、社内で築き上げた人脈があれば、この社員旅行に参加する意味もなくなってくる。

そのため、参加するのは新入社員か、ただドンチャン騒ぎがしたい若手社員が過半数を占めている。

ゆえに、旅行に行くムードも学生時代の修学旅行と同じである。




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