「ん… あちぃ…」


 額の汗をぬぐって目を開ける。

 
「あ? どこだここ?」


 見覚えのない天井。

 他人の匂いのする、布団。

 
「ああ、そういえば」


 要の部屋か。


 カラダにまとわりつく汗ばんだTシャツ。

 なんだ俺、このまま寝てたのか。


 上半身を起こして目を細める。

 ベランダからは煌々と陽が射していて、

 締め切った部屋のなかは蒸し風呂状態だ。


 ジーンズのボタンを外して腹回りをラクにする。

 Tシャツを脱ぎながらベランダへ歩み寄り、カラカラとその戸を引いた。


 焼けたアスファルトの匂いが入り込んでくる。

 どこか遠くの方でセミの鳴く声がする。


 どうやらこの部屋は、俺のアパートよりも日当たりがいいらしい。

 眉間から流れ落ちた汗が、肩をすべって胸元で静止した。


「もう昼過ぎか」


 手にしていたTシャツで汗ばんだカラダを大雑把にぬぐってから窓を閉めた。

 空の真上にある太陽の暑さにはかなわねぇ。

 部屋の中を散々歩き回ってやっとエアコンのリモコンをみつけた。

 
 まだ二日目だ。

 部屋のかってが良く分からない。

 
 冷蔵庫から水を取り出してとりあえず一気に飲んだ。

 飲みながら、シンクの上へ目をやると、一組の皿が片付けられていた。


「あのオンナ、そういえばどこ行ったんだ?」


 …出てったか、本気で。

 「自分のアパートに戻りますっ!」


 お前は、俺の女房かってーの。