三月。


 春休みボケの頭を抱えて歩く駅前の道。

 三月下旬ともなると、夕方の風もそれなりに暖かい。


「ぶぇっっくしょいっ! ちきしょー!!」

「………」


 風邪か。

 それとも花粉症か。


 歩きながらの中年オヤジのでっけぇくしゃみ。

 別にくしゃみはかまわねぇが、マスクくらい装着しろ。

 

 四月になればまた大学か。

 早いもんで俺も三年生ってわけだ。

 そろそろ就職のことも考えねぇとな。

 時間なんて、あっという間に過ぎちまう。


 1、2年と、これといって大きな生活の変化もなく過ごしてきた。

 適当に友達を作って群れて、

 飲みに行けば笑い、たまにケンカなんかして、

 まあ、それなりに付き合いやすいダチもいる。

 
 今の生活に特に不満はない。

 バイトと大学の往復みたいなスタイルが出来上がってからは、

 ダチと群れる機会も前よりは減っちまったが。



 このまままったりと時間が過ぎて、

 卒業して、就職して、また新しい環境に身を突っ込むことになるんだろう。


 浮いた話も特にない。

 高校時代の彼女と別れてからの二年間、オンナ無しだ。


 大学に入ってから、何人かに言い寄られたことはもちろんある。

 何たって俺だ。

 昔からモテるのは自分でも分かっている。

 分かってはいるが、何故モテるのか、その辺の事情はよくわからない。

 
 顔か。


 だろうな。


 別に俺はオンナに優しくした憶えもねぇし。


 言い寄ってくるオンナは皆そうだろう。

 結局は俺の顔しか見てねぇんだろ。


 今思えば、高校時代の彼女もそうだったんだろうと思う。

 付き合うまでの経緯が自分でも思い出せない。

 
 まあ、それなりに楽しい思い出もあるが、

 結局のところ、ヤリたいだけだったのかもな、俺も。