「ま、これで良かったんだよな」


 駅近くのファミレス。

 ぬるくてまずいブラックコーヒーを啜りながら眺める窓の外。

 さっきまでの雨は上がっている。

 車のヘッドライトが窓ガラスの水滴に滲みながら、一台、また一台と通り過ぎていく。


 本日4杯目のコーヒーだ。

 まずくてかなわねぇ。


「しかしあのオンナ、俺を変質者に間違えるとはな」


 まあ、俺の近寄り方も悪かったとは思うのだが。



『わ、私なんて襲っても、全然面白くないですからっ』


『む、胸は小さいし、襲い甲斐、無いですからっ』



「…ふ」


 サイズ確認済みだ。

 んなこと分かってるつーの。

 っていうか、変質者にそんなこと暴露すんなってーの。

 余計に興味が沸くだろ。

 
「まさか泣き出すとはな」


 別に驚かそうとして腕をつかんだわけではないんだが。


 あんなにびしょぬれになって。

 ちゃんとシャワー浴びただろうか。

 バスタオルで少々搾り出してやったが…


「男に免疫なさすぎだ、アイツ」


 ぼさぼさ頭を整えてやれば、真っ赤な顔しやがって。


「しかし…」


 変質者が現れるかもしれねぇって夜に、一人で歩くか、普通?

 腹減ったからって理由も…

 一晩くらい我慢しろってーの。


 つかんでたのが俺じゃなかったら、どうしてたんだ、アイツ。

 いくら「胸がちっちぇ」ことを宣言したって、

 男なんて引かねぇぞ、バカが。

 
「危なっかしいオンナだな」


 一人じゃ何もできないタイプだろうな。

 ひと言ひと言への反応も大袈裟すぎる。


 よくあれで今まで生きてきたもんだ。

 まあ今は、要がいるから何とかなってるんだろうけどな。