一旦、家に帰宅した私と神野くんは18時に最寄駅に集まり、そこから帰宅途中のサラリーマンたちに混じり電車に乗り込みました。

 全身黒で統一している私と、神野くんも顔を隠すためのフードつきのパーカーを羽織っていました。

「なぁ、あの依頼主に会うんだよな」

「はい」

「…お前の母親なのか」

「分かりません。夫の子どもという言い方も気になります。ですが、少なくとも母親ではありませんよ」

「は?」

「私の母親は桃さん1人だけです。だから、仮に私を生んだ人だとしても、その人は親ではありませんから」

「…そうだな」

 神野くんは笑うと、目的地の駅に着いたのをみて、人ごみにもまれている私を引っ張り出してくれました。

 ふぅ、帰宅ラッシュもすごいですね。