【side和哉】
人は生涯、一体何人の人を愛することが出来るのだろうか。
そう聞かれたら、俺は間違いなくこう答える。
そんなもの、"ひとり"に決まっているだろう。と。
一体どこから話せばいいのだろうか。
わからないから、彼女と出会う前の話からしようと思う。
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俺は、幼少期の頃から幾度と転校を繰り返していた。
原因は、母親の浮気。
俺の母親は気の多い女で、相手に恋人や奥さんがいようといまいと、気に入った男にはすぐに手を出すようなどうしようもない人間。
相手の周囲に浮気がバレる度、近隣で"水谷さん家はおかしな家族だ"と噂になり、嫌がらせを受けた。
かく言う俺も、学校では水谷さん家の息子と遊んではいけないと噂され、友人ひとりいなかった。
俺の父親は、母親が浮気していることを認知していて、それなのに何も言わない。
ほんとうに、おかしな家族だったんだ。
最初はどうして俺が学校で避けられなければいけないか、近所で嫌がらせを受けるのか、わからなかった。