「有藤さん、これとこれ、お願いしますね」

いつもキリッと、スーツを着こなし、サラサラストレートのショートカット黒髪。

誰もが認めるイケメンな顔。メガネから覗かせる優しい瞳。

いつもニコニコしていて、みんなから愛される上司、藤岡 修二部長。


「これは私の仕事ではなく、藤岡部長の仕事、ですよね?」

真顔で言ってのけたのは、この私。

28歳にして、異例の出世と言われて、海外事業部の主任をしてる有藤麗美。

黙っていれば綺麗なのに、口を開くと、常にツンツンしている。

…周りは、私をクールビューティーと呼んでくれるけど、本人は全くそうは思わない。

仕事に真面目なだけで、普段は決して、こんなにツンツンしているわけじゃない。


…ただ、普段の自分は隠してるだけ。

本当は、どっか抜けていて、よく笑うし、よく泣く。

でも、そんなとこは、仕事場の人間には見せたくない。

自分が築き上げてきたものが、一気に崩れてしまいそうだから。


…苦労して、やっと、この地位に上りつめたと言うのに。

そんなへまだけは、やらかさないように、いつも気を張り詰めている。