あれから、どれくらい経ったんだろう。




膝を抱えたまま震えが止まるのを待っていた私の耳は、随分物音に敏感になっていたようで。


心臓もだいぶ落ち着いてきた頃に、カタリとほんの小さな物音を聞いて再び心臓が飛び跳ねた。


素早く顔をあげて、いつでも立ち上がれるように一瞬で体制を整える。







…はあ。


……我ながら、忍者か何かかと思ったよ。


夜襲に勘付いた武士か、私は。



教室を覗き込んできている人の顔に見覚えがあるのを確認した私は、安心からか溜息と共に心の中でそんなツッコミを入れていた。



「…舞?」


「陽くん…」


「舞…だよな。はぁ…びっくりしたぜ。
お前、すげぇ俊敏に動くから」


「…あはは…」



私も今思ってたところだよ…。



でも、よかった。陽くんも無事だったんだ。



幾分かホッとした様子の陽くんが近付いて来る前に、素早く石を確認する。


大丈夫。光ってない。



正真正銘、陽くん本人だ。



「こんなとこでなにやってんだよ?」


「あぁ…さっき、〈あの子〉に遭遇しちゃって…隠れてたの」


「!〈あの子〉……」



〈あの子〉と聞くなり陽くんの顔が一気に険しくなり、その拳が痛そうなくらいグッと力強く握られる。



…もしかして。


陽くんも正秀くんを見たのかな。



陽くんの顔が怒りに染まっているように見えて、なにも言えなくなってしまう。