島を一周して家に戻ると、母がパニックを起こしていた。


「あんた!部屋引き払ったん⁉︎ 」

ベッドやタンス、布団に段ボール。
暮らしていた部屋に置いてあった大量の荷物が届き、慌てふためいていたのだ。


「そうよ。今日からここで暮らすの」

なんでもない事のように返事をしながら、祖母の顔色を伺う。
渋い表情を浮かべながら、祖母は私の顔を見つめ返した。

そんな祖母に背中を向け、玄関先に置かれた段ボール箱を持ち上げる。


「ベッドやタンスは部屋に運んでもらえた?」
「そりゃ勿論そうしたよ。こんな狭い玄関口に置かれとったら困るからね…」
「ありがと。…じゃあここにある荷物、持って上がればいいね」

トン…と階段に足をかけたところで、祖母に呼び止められた。


「…夕夏、大丈夫なのかい?」

顔だけを振り向かせて、「平気」と笑う。

段ボール箱の数は、わざと減らした。
あまりに多くの荷物を運ぶと、後にこたえるのは十分分かっていたから。


階段を上下すること10往復。
玄関口に置いてあった荷物は全て部屋に運び入れた。



「ご飯できたけど…」

祖母が呼びに来る。


「…ちょっと休ませて……」

言葉少なく断る私の顔色を見て、祖母は、「…じゃあ、また後で…」と下りていった。


台所では、母が文句言っている声が聞こえる。
単なる里帰りではなく、戻ってきたこと自体を怒っているようだ。