………………………………………………………





「何っ...!?」




一瞬のことだった。




首にあてがわれたものの冷たい感触で、すぐにそれがこいつの短刀だということが分かる。



驚きでしばらく固まっていたが、彼女がそれをそっと首から離したことで我に帰った。




「...ありがとうございました。」



礼をして顔を上げたときにはいつもの御堂に戻っていた。


にこりと、一見無害そうな微笑み。






だが俺は試合中の彼女が忘れられない。



まるで別人のように眼光鋭く、幾人も殺してきたかのような顔つき。


そして蛇のようにしなやかで かつ素早い動作。


実際、殺すつもりだったのだろう。




人間の急所である首に手を当てる。



まだ首筋に木刀の冷ややかな、嫌な感触が残っていた。







「...負けたのは久方ぶりだ。

迷いのない、見事な業だった。」




「いえ、そんな...

...ですが、やはり剣術相手だとどうしても短刀がないとだめですね。


相手が丸腰だったならこちらも素手で応戦できますが...。」



何に謙遜しているのか、はにかみながらそう告げた彼女は全くいつも通りで。



俺は少しこいつが怖くなった。