ルカと外出して以来、俺は相変わらず日々執務をこなしている。ずっとこんな調子でルカを中々外に連れ出してやれない。だからせめて部屋の外には出してやりたくて、温室とテラスに行く事を許した。勿論条件付きで。

ルカの育った世界や両親の事を色々と調べてはみたが、特に変わった事は分からなかった。ごくごく一般的な家庭で、不思議なところや疑問に思うところは一つもない。ただ、ルカは本当に愛されて育ったんだなと思った。

結局ルカには何も話せていない。黙っている罪悪感よりも、手放す事の恐怖の方が大きい。だがルカの事を本当に愛しているのなら、望みを叶えてやるべきなのかもしれないと思う時もある。

思わずため息が漏れた。そしてふと今朝のルカの様子を思い出した。

そう言えば今日はラキとテラスに行ってみるとはしゃいでいたな。

ルカの顔が見たくなり、書類をしまい大執務室を後にした。

逸る気持ちを抑えていたつもりだったが、テラスに向かっている自分の足は気付けば速足になっていた。テラスに近付くと、ルカの笑い声が聞こえてきた。てっきりラキと楽しんでいるんだろうと思ったが、セリアルの気配を感じて思わず足を止めた。

窓越しにルカとセリアルが楽しそうに話している姿が見えた。俺と居る時よりも自然体に見えて、胸がざわついた。


「ルカ。」

「シエル!?」


多少のイラつきを覚えたが平静を装って声を掛けると、ルカは驚いた顔で振り返った。


「お前がテラスにいるなんて珍しいな。」

「偶然通りかかったら窓からルカたちが見えたから来ちゃった。 兄様、仕事はもう終わったの?」

「あぁ。」


俺とセリアルが兄弟だと知らなかったルカは、大きな瞳を更に大きくさせ驚いていた。家族の話などした事なかったからな。