仕事をしていると、ドアの向こう側にカナリアの気配を感じた。


「入れ。」


そう言うとノックの後にドアが開き、カナリアが姿を見せた。


「お仕事中失礼致します。」

「構わない。 それよりティータイムはどうだった?」

「とても楽しいひと時でしたわ。 ルカ様はお顔だけでなく、雰囲気や性格もローズ様に似ていらっしゃいますね。」

「……あぁ、そうだな。」

「気品や優雅さ、そして愛らしさはローズ様の右に出る者などおりませんが、それでもお茶をしながら何度か錯覚を起こしてしまいそうでしたわ。」


カナリアに言われるまでもなく、それは俺自身が一番よく感じている。そんな俺の心を試すかのようにルカは無防備で、自制心が利かなくなりそうになる時がある。


「お部屋を別にされた方が宜しいのではありませんか? 今のままではお二人とも傷付く事になるかもしれませんよ?」


俺の気持ちを見透かしている様な目で提案するカナリア。だがもう遅い。たいした時間を一緒に過ごしたわけではないというのに、既にルカの手は俺の心臓に触れている。


「何を言っているのかよく分からないな。」

「……さようでございますか。 それではこの件に関して私が口を挟むのは最後に致します。」


頭を下げたカナリアは振り返る事も足を止める事もなく、静かに部屋を出て行った。ドアが閉まるのを見届け、頭を抱えた。

何故出会ってしまったのだろう……。