大執務室の中の一室である、俺専用の個室には許可なくして入る事を許していない。ジョシュでさえこの部屋には無断で入らない。


「どうだ? 何か分かったか。」

「残念ながらまだ何も分かっていない。 ルカに聞いた話しを元に探しているがまだ何処だか分からない。 異世界と言っても数が多すぎる。 それに一つ調べるだけでもの凄い体力を消耗するから、中々作業が進まない。 ルカを見つけてこの世界へ連れてきた術者を思わず尊敬してしまいそうだ。」


報告をしに来たジョシュはソファーに深く腰掛けて珍しくぐったりしている。

術の難易度が上がれば上がるほど術者の体力は削られる。精神的にも疲れが溜まる。

ジョシュだけではなく他の術者にも作業に当たらせているが、極力周りの者たちに知られたくないため、少人数で動いている。


「術者だが、もしかしたらこの世界の者ではないかもしれないな。」

「どういう事だ?」

「これは俺の推測だが、ネックレスが光って何らかの作用をもたらしたとするなら、もしかしたらルカはこの世界に連れて来られる予定ではなかったのかもしれない。 っとなれば、術者もこの世界の住人とは限らない。 当初は純血のヴァンパイアの仕業だと思っていたが、そうじゃないかもしれないな。」


ジョシュは眉間を押さえ大きなため息を漏らした。


「……ルカが生きている内に見つかればいいな。」

「……あぁ。」


俺たちヴァンパイアの命は半永久で、生きる事に疲れたり飽きた者は自ら命を絶ち生を終わらせる。いつくるかも分からない寿命を待つ者などそういないだろう。だが人間は違う。病気を患い、それは時として命をも奪う。怪我も同じと言えるだろう。順調に生きた人間ですら寿命という運命に命を奪われる。

ルカはいったい後何年生きていられるのだろうか。