鏡に映る自分の姿は見慣れたはずなのに、年に一度のこの日は不思議と違って見える。


「まぁまぁ、やっぱりそのワンピースは瑠花(るか)に良く似合うわね。」

「本当? お母さんの見立てが良かったんだよ。」


鏡の前に一緒に立ったお母さんは、幸せそうに笑った。それにつられて私まで笑顔になる。

このお家の子供になれて心の底から良かったと思う。


「可憐で心優しくて、そして芯のしっかりしている瑠花は私たちの自慢の娘だよ。」

「もーお父さんってば大げさだよ。」

「あはは、そろそろ行こうか。」


ドアから顔を覗かせたお父さんの後を追って、お母さんと一緒に部屋を後にした。

今日は私の16回目の誕生日。けど今日が生まれた日な訳じゃない。今日は私がお父さんとお母さんに拾われた日。その事実を告げられたのは、中学に進学して直ぐの事だった。

私を抱きしめて泣き崩れるお母さん。そんな私たちを大きな胸で抱き留めてくれたお父さん。思い返してみれば、腫物を扱うように私に接する事があった両親。話を聞いて納得した。けどその日を境に私たちは本当の親子に慣れた気がする。

ホテルへ向かう車の中でも仲睦まじい両親。後部座席から見る両親の姿が昔から好きだ。

外に目を向けると、窓ガラスに首からかけているネックレスが映った。Rの文字に添えられた小さな薔薇のネックレス。これは捨てられていた私が首からかけていたものらしい。恐らく名前のイニシャルだろうという事で、両親は私に瑠花という名前を付けた。両親から真実を聞いたあの日、このネックレスを捨てようとした。けど、何故だか捨てることができなかった。捨てるどころか、毎日身に着けている。

_どうして私は捨てられたのかな?

いくら今が幸せでも、その疑問だけは拭えなかった。