“この案件は家に持ち帰って、ちょっと寝かしてきてよ。自分じゃ解決できないなと思ったら、また持ってきて”


 相良さんちから課せられた案件は、家に持ち帰って寝かせている間に、私が寝込んでしまった。
 相良さんのせいだ。

 変なことをする元気はないと言ったくせに、風邪を移してきたんだ。
 そもそも、初対面に近い女にいきなりキスしてくるなんて、犯罪じゃないだろうか。イケメンだから許される?

 いいや、私は絶対に許さない。
 今まで相良さんを『一人でも平気そうだから』と判断して別れたカノジョたちの神経を疑ってしまう。




「大丈夫? 美緒ちゃん。アリーちゃんから、美緒ちゃん風邪で寝込んでるって聞いて」

 相良さんからは絶対かかってこないと思っていた電話がかかってきて、思わず姿勢を正してしまった。

 アリーちゃんというのは、バイト先の同僚、有川さんのことだ。
 例の合コンで、男性陣から勝手にアリーちゃんと愛称をつけられて呼ばれていた。

 あの合コンの場でも相良さんは愛想が良くなくて、誰ともいい雰囲気にはなっていなかったはずだ。いつの間に、アリーちゃんと通じていたんだろう。
 そのことへの面白くなさを真っ先に感じる。

「有川さんの電話番号、知ってたんですね」

「え? ううん、知らない。お店に行ったらいたから。あ、美緒ちゃんに会いに行ったんだけどね」