「夏来?どうして行かないの?」



黒いランドセルを背負った夏来は、玄関で座り込んでいる。


「なつ、おいで。お姉ちゃん送ってあげる」



高校3年生になった愛優は、ランドセルと同じくらいの小さな体の夏来に手招きをした。



「パパとお家いる!」



「…夏来、パパお仕事行かなきゃ」



リビングから玄関に向かって言ってみるけど、夏来は靴を脱ごうとする。



「なつ、送ってあげるって」


愛優が腕を掴むと、嫌そうに首を振った。



「学校行かない!」



「…何かあった?」



「…ない」



「お友達と給食食べて帰ってくるんだよ?」



「夏…行かない」



「…困ったな」