幸さんのいう通り、
幸奈は俺が側に行ったら
目を覚ましてくれた。

『あい君……?』

俺の名前を呼び、辺りを見回した。

『病院?』

診察室から病室に移す時に
お姫様抱っこをしても幸奈は
目を覚まさなかった。

『そう、病室だ』

包帯が巻かれていない右手を握った。

俺は幸奈が
眠っていた間の事を話した。

泣きながら謝られた。

誰一人、幸奈を責める者はいない。

大丈夫だと言って頭を撫でた。

『幸奈、手紙に書いたこと本当?』

一番に確かめたかったことは
手紙に書いてあった“愛してる”だった。

『ぁはは……恥ずかしいなぁ……』

苦笑して、
一瞬だけ俺を見て目を反らした。

『そうだよ。
私はあい君を愛してる』

天井を見上げながら幸奈は言った。

病室の外にいる幸さんや竜さんにも
聞こえているだろう。

そう思ったタイミングでノックされた。

『竜君かな?』

天井からドアに視線を移して。

応えずに俺がドアを開け、
入って来た人物に幸奈が
吃驚している。

『お母さん……』

幸さんは幸奈を抱き締めたまま
何度も何度も謝っていた。