私は幸奈達が心配だった。

最初は驚いて
あんなことを言ってしまったけれど、
両隣の二人には感謝している。

教師と生徒というのは
少し微妙だけれど
私達が居ない間、一緒に
居てくれる人がいると
分かった時、嬉しく思った。

私はそう思ったけれど、
あの人は違ったみたいで
幸奈が彼らを
誘惑したみたいに言っていた。

それについては私は反論した。

幸い、幸奈の恋心に
気付いていない様子だったから。

しかし、あの人は学校に
匿名で密告してしまった。

そして、最悪の事態が起きてしまった……

それは、
青山さんからの電話で知った。

『今、お時間大丈夫でしょうか?』

仕事も一段落してるし大丈夫。

「えぇ」

彼が話した内容に私は
頭を鈍器で
殴られたような気持ちになった。

「分かりました、今すぐ
そちらに向かいます」

仕事なんてしてる場合じゃない。

部下に帰る旨を伝えて
駐車場へ急いだ。

幸奈……ごめんね……

「青山さん‼」

私が来るのを待っていてくれたみたいで
病院の入り口に青山さんが立っていた。

『お待ちしていました』

中に入ると花蕾さんが
祈るように俯いていた。

「山川さんのご家族の方は?」

医者に言われ、近くに行った。

「私です」

「娘さんは一命を
とりとめましたが
目を覚まさないんです」

私は分かってしまった……

幸奈が目を覚まさない理由を。

母親だもの……

だから、私は花蕾さんに
お願いすることにした。

「花蕾さん、幸奈は
あなたを待っているんだと思います。
どうかお願いあの子を助けて下さい」

私じゃ駄目だ。

お伽噺のように、
キスで目覚めるなんて言わないけど
彼が近くに行けばきっと目を覚ます。

母親の勘だ。

「分かりました」

彼は幸奈の居る診察室に入って行った。

「青山さん、ありがとうございました」

あの人には連絡しなかった。

幸奈を罵るだけと分かっているもの。

『いえ、
幸奈が一命をとりとめてくれて
本当によかったです』

そうね……

本当によかった……