校長室に呼ばれ、散々言われたが
別に悪いことをしてないと
俺も竜さんも思っている。

先に帰った幸奈は
どうしてるだろうかと考えながら
自宅の前まで来ると扉に
何かが挾間っていて、引き抜くと
《あい君へ》と幸奈の字で書かれていた。

中に入らずにその場で開いた。

《あい君へ、
まずはごめんね。二人は
迷惑をかけられた覚えはないって
言ってくれたけど、私のせいで
謹慎になっちゃったんだから
結局は迷惑をかけたのと同じだよ……
でもね、三人でいた時間は
凄く楽しくて、満たされてた。
それと、これが最初で最後の
手紙だから言うね。
私はあい君を愛してました。
本当にありがとう。バイバイ。
幸奈より 》

最初で最後?

まさか‼

階段を駆け降りて管理人室に急いだ。

『鈴原さん、急いで
七〇八号室の鍵開けてくれ‼ 』

俺の焦りようを見て
ただ事じゃないと
察してくれたみたいで
二人で七〇八号室に向かった。

鈴原さんに開けてもらい
幸奈の名前を呼びながら中に入った。

そして、お風呂場で発見した……

湯船に浸けていたせいで
血が中々止まらない。

俺は咄嗟にタオルかけに掛かっていた
フェイスタオルで幸奈の傷口を縛り、
抱き抱えて出た。

「え、幸奈ちゃん!?」

鈴原さんはぐったりした
幸奈を見て吃驚している。

『手首を切ってます』

なぁ幸奈、
お前のせいじゃないんだよ。

謹慎だとか言ってる場合じゃない。

七〇八号室の鍵を閉め、
階段を降りて駐車場に向かい、
幸奈を抱いてる俺の代わりに
鈴原さんに車の鍵とドアを
開けてもらった。

病院に着き、幸奈を医者に
預けたところで携帯が鳴った。

ディスプレイには“竜さん”の文字。

マンションに着き、幸奈の
手紙を見付けたのだろう。

外に出てから電話に出た。

『今何処にいるんですか!?』

焦る竜さんの声。

『杉宮総合病院』

この辺りで一番でかい病院だ。

『分かりました、
私もそちらに向かいます』

タクシーで来た竜さんと中に入り、
幸奈を預けた医者が出て来るのを待った。

竜さんは幸奈の手紙を読んでいる。

チラっと見た竜さん宛ての手紙は
愛してる云々のくだりだけを抜いて
他は同じ文書だった。

幸奈、お願いだから助かってくれ。

そして、今度は、文書じゃなく
お前の声で俺が
好きだって言って欲しい。

俺もお前を愛してる。