次の日の昼休み。


教室の前のドアから聞こえた大好きなあの人の声。



「神永ゆのいる?」


「ゆのー?呼んでるよー」


颯斗が私を呼ぶなんてめずらしい。


なんだろう。


またあの子を思い出してしまった。

今はなんとなく会いたくないな。




無言の颯斗に連れてこられたのは理科準備室。


いつもほとんど使われることのないこの部屋はサボり魔たちの隠し部屋だったりする。


今日は私と颯斗しかいない。


颯斗がガチャりと鍵をしめた。


「颯斗?」


「なんでLINE無視したの」


表情をぴくりとも変えずに淡々と話す颯斗。


「別に…朝忙しくて返してなかっただけだよ!」


私は笑顔で返す。


その瞬間、颯斗は左手を私の後ろの壁へついた。

いわゆる壁ドンってやつ。


でも今はそれどころじゃない。



颯斗が不機嫌だ。



表情は変わらなくても雰囲気でわかる。