タクシーを降りて、自分の部屋に入った瞬間
やっと、ひとりになれたという安心感に、どっと肩の力が抜けた。

肩にかけたバッグが、するりと抜けて
バサリと床に落ちる。

ムーミンの手帳、薬用のリップクリーム、財布、イヤホン、携帯


見事に散らばってしまった中身。
だけど今のわたしには拾い上げる気力なんて、ない。


去り際、申し訳なさそうに視線をふせたままのルーカスさんが瞳に残っていて

(もう我慢しなくていいかな…)

そう思ったら、すぐに鼻の奥がツーンと痛くなって
じわじわと瞼が熱くなるのを感じた。

誰かに許しを請いたいのに
誰にも許してもらえそうな気なんてしなくて
胸の中が、幾重にも千切れそうになるのを感じた。