その日は朝から雨が降っていた。

兄がわたしの誕生日だからと数日前からレストランに予約をしてくれていたので
仕事終わりに、合流する予定になっていた。

入り口で扉を開けてもらったあと、
傘とコートを預けながら「三澤です」と予約していた名前を告げると
奥の個室へと通された。

部屋に入ると、チューリップの形をしたランプに反射して
窓辺に下げられたサンキャッチャーがキラキラと雪のような光を床に零していた。

「麻友子さん」

え、と思いながら声のした方に視線を移すと
そこにはなぜかルーカスさんが立っていた。

兄の姿は、なかった。