午前七時半。この辺の中学生は皆、登校する時間だ。
「亜由美、おはよう! ごめんね、遅れちゃって……」
「大丈夫だよ。さぁ、行こう」
ゆっくりと自転車のペダルを踏んだ。
亜由美はいつも加織と一緒に登校している。
特別仲がいいわけではないが、お互い家が近いのだ。
「そういえば、松岡君って加織の事、好きらしいよ」
少し小耳に挟んだ話だが、きっと本当だろう。
加織はとても可愛いのだから。
「えぇ? 亜由美、それ本当なの?」
「うん。二組の早苗ちゃんから聞いた」
嘘でしょ。と言いつつも、加織は嬉しそうだ。
……まあ、加織がモテるのも分かるなあ。
ふと、加織を見てみる。
柔らかそうな、栗色の髪の毛。
ぱっちりと大きい、二重の目。
雪のように真っ白な肌。
華奢な身体――。
それに比べて、私は――、
癖っ毛な黒髪。
奥二重な目。
太陽に弱いせいで、所々あれている肌。
ぽっちゃりした身体――。
加織に気づかれないように、そっとため息をついた。
やっぱり、私に恋なんて無理なのかな――
「亜由美、そろそろ急がないと間に合わないよ!」
「あ、うん!」
ぎゅっとハンドルを握り、二人は学校へ向かった。