―――翌朝、目覚めは思ったより悪くなかった。すっかり熱も下がり、節々の痛みも消えている。


「注射が効いたのかな……」


父親が部屋まで持ってきてくれたおかゆを食べ、ベットでゴロゴロしてるとラインの着信音が鳴った。


《一輝に聞いたよ。風邪だって?大丈夫?》


雅人さんったら、仕事中なのに私の事心配してラインしてくれたんだ。


昨夜は弱っていたから一輝に変な感情を持ってしまったけど、今思えば、なんであんな事思ったのか……実にアホらしい。雅人さんの方が一輝より100倍優しいのに。


《もう熱も下がって元気になったよ》と返信すると《無理しちゃダメだからね》って優しい言葉がディスプレーに現れる。


ほっこり微笑み喜んだのもつかの間、次の瞬間、表示された文字を見て愕然とした。


《蛍子のお父さんにも挨拶したいし、今日、仕事が終わったらお見舞いがてらお邪魔しようかな?》


「ひぃ~!ダメダメ!そんなの絶対にダメ!」


まだ一輝の事を話せてない状態で父親に会わせるワケにはいかない。父親が雅人さんと会えば、必ず一輝の話しをするはず。それに、夜になれば一輝も帰って来るし、鉢合わせでもしたら余計話しがややこしくなる。


《その件に関しては、また日を改めてという事で……》と丁重にお断りした。


危ない危ない。でも、もうそろそろ覚悟を決めないと……このままじゃ、いつまで経っても結婚出来ない。