―――次の日
「わっ!ヤバ!もうこんな時間」
すっかり寝過ごしてしまい慌てて出勤の支度を始める。
昨夜、あれから一輝に「絶対契約を取れ!」って、プレッシャーを掛けられ続け、事の重大さに気付いた私は不安になり、なかなか寝付けなかった。お陰で、また寝不足だ。
実は今日のアポ、一輝がついてってやるとか言ったけど、断った。一輝に借りを作りたくないのもあったが、私の直属の上司は雅人さんだ。同行してもらうなら当然、雅人さんにお願いするのが筋だと思ったから。
着替えを済ませ部屋を出てドアを閉めようとして気が付いた。ドアのノブになんかぶら下がっている。
「あ、これは……」
光沢のある小さなピンクの紙袋に見覚えがあった。私が10代の頃、大好きだったブランドの物だ。
「でも、なぜ?」
不思議に思いながら中を確認すると、細長い箱に入ったソレは、もうすぐ30代に突入する私にはとても似合いそうもない可愛いネックレス。そして、添えられていたメッセージカードに書かれていた文字は―――
"Happy Birthday ホタル"
「一輝、私の誕生日覚えてたんだ……」
でも、それより驚いたのは、このネックレス。これは私が19歳の誕生日に、一輝に買って欲しいとねだったモノだったから……
「一輝のバカ……遅過ぎだよ」
10年前にこれを貰えたら、どんなに嬉しかったか……そう思うと胸がギュッと締めつけられる。