涙が次から次へと溢れてきて止まらない。こんな泣き顔を父親やママに見られたくなくて、夜の公園でひとり、ひたすら涙を拭っていた。


新田係長や奥田主任に一輝の気持ちを聞かされ覚悟はしていたけど、本人に直接拒否された事で、全ての希望は泡と消えた。


出来るものなら、時計の針を戻したい。一輝にプロポーズされたあの時に戻りたい……


一輝を失ったという現実をく受け入れたくなくて、止めどなく流れる涙。


そして、一輝のマンションを出てから1時間後、私はようやく家に帰って来た。


居間に父親とママの気配を感じ「ただいま。一輝がお弁当美味しいって言ってたよ」と声を掛け、そのまま自分の部屋へ直行する。


倒れ込む様にベットにダイブして布団に顔を埋めると、ドアをノックする音が聞こえママが部屋へ入って来た。


「蛍子ちゃん、一輝となんかあったの?」

「えっ?どうして?」


布団に顔を埋めたまま、わざと明るい声で聞き返す。


「さっき、診療所の先生から電話があったんだけど、なんか蛍子ちゃんの様子が変だったって言ってたから……喧嘩でもしたのかなって思って……」


あのエロジジイ、余計な事を……


「うぅん、別に何もないよ。私は至って普通。あの先生、少しボケてきたんじゃない」なんて誤魔化し、豪快に笑い飛ばす。


「そう……ならいいけど。あ、それと、一輝、やっぱりインフルだったみたいよ。会社は暫く休まないとね」


それだけ言うと、ママは部屋を出て行こうとした。その後ろ姿を見て、私はあの事を思い出し、慌ててママを引き止める。


「……ママ、待って」