―――週明けの月曜日。


半月ぶりに会社に出社すると、父親の事を知っている班の人達が、次々に御見舞の言葉を掛けてくれる。仲間っていいなって感激しまくっていたら、新田係長の声がした。


「吉美田さん、ちょっと……」


私と一輝の関係に気付いているであろう新田係長が、どんな嫌味を言ってくるか……覚悟して彼女の前に立ったんだけど、予想に反して新田係長は心配そうな顔で私を見つめてくる。


「お父様はもう大丈夫なの?なんなら、もう暫く休暇を取ってもいいのよ」


まさか彼女の口からこんな優しい言葉が出てくるとは思ってなかったら戸惑いを隠せない。


「あ、はい。有り難う御座います。でも、もう大分良くなりましたから、御心配なく……」

「そう、それは良かったわ。でも……」


一瞬微笑んた新田係長だったが、すぐに笑顔が消え、深刻な表情に変わる。


「お父様の入院があったから仕方ないけど、吉美田さんの今月の成績……目標達成は無理ね」

「あ……」


そうだ。今月は契約ゼロだった。このままじゃ、確実にブラックリスト入りだ。


焦って「すみません」と頭を下げる私に、新田係長が意外な事を言ってきた。


「それでね、私の顧客を吉美田さんの担当にしようと思ってるの。話しはある程度詰めてあるから、契約は間違いないと思うわ」

「えっ?新田係長の顧客を私にですか?」

「そう、私がアクセスに入社して、この東京支社に居た頃にお世話になった文具メーカーの常務なの。ちょっとクセのある人だけど、悪い人じゃないわ」