★★★★

お互いの部屋がある8階に着き、玄関の前まで歩いた時、愛児が口を開いた。

「俺、昼間の汗で気持ち悪い。部屋も片付けたいし。30分後な」

私は素直に頷いた。

私も日中汗だくだったし、この窮屈なスーツを脱ぎたかった。

「寝るなよな。随分酒臭いけど」

「そんなに飲んでないわ。てゆーか寝たら寝たであんたラッキーじゃん。独りでゆっくり見られるし」

私がそう言いながら愛児を見上げると、彼はムッとしたように切れ長の眼を光らせた。

「俺がわざわざ誘ってやったのに、寝られたらプライドが許せねーの」

……男前という生物は、絶対的な自信と山のように高いプライドを所持しているらしい。

不細工がこんな事言うと秒殺だ。