東京 新宿

午後の日照りが照りつけるなかで
相良 葉は裏路地の一角のビルに入った

自動ドアが無造作に開くと
小型のエレベーターに乗る

三階のボタンを押すと
鈍い機会音が鳴り響く



ドアが開いたのと同時に相良は
前へと歩きだす





「あっ!葉さーん!!」




受付の茶髪の女性が相良に手をふった





「お久しぶりでーす!」




「ああ、山瀬さん、こんにちは」



相良は軽い会釈をしながら
山瀬にバッチを見せた




「もう、葉さんったら、いつも連れないんだから………
まこ、怒っちゃうぞ!!」


山瀬 真琴 23歳
七瀬探偵事務所の受付兼雑用係




「………はは、まあ、久しぶりって
いっても、3日ぐらいだろ?」





「3日も会えなくて、寂しかったの!!
もう、所長もむやみに出張入れんなって
かんじ!!」




「今回は、俺が自分で選んだ仕事だよ」





「まあ、そうだったの?
葉くんも仕事熱心だね、
所長なんて毎日だらだらしてるよ!!
マダオだわ!」






「誰がマダオだって?」




その時、事務所の奥から
よれよれのジャージ姿の男が現れた





「うげえ、所長ー!」



山瀬が苦いものを見たように
あからさまな顔をした



「おい、相良、
お前、こんなところで女口説いてんじゃねえよ」




「………どこをどう見たら
口説いてるようにみえるんですか?」





「まあ、いい、とりあえず
中に入れよ
仕事してきたんだろうな?」




「所長にだけは言われたくないです」