新学期が始まって3週間がたった。
男子バスケ部にも、新入部員が入ってきた。今年は11人と、マネージャーが1人入った。
このマネージャーが、美里と里菜ちゃんが言っていた後輩·近野エリカ(コンノ エリカ)ちゃんだ。

入部したその日に、
「響先輩、お久しぶりです!」と、すぐに杉田に駆け寄り挨拶していた。
みんなの前では私とくるみにも、
「くるみ先輩、智美先輩。いろいろ教えてくださいね」と笑顔で言うくせに、実際にドリンク作りを指示すると、
「えーっ!私が1人でやるんですか?それ、すごく重いですよね?」
と文句を言う。

仕方なく、くるみと一緒にタイマーやナンバリング·ボトルの準備をしてもらい、私がジャグにドリンクを作って体育館に行くと、彼女はボトルを手にして「あとは私がやります」と、ドリンクを注ぎ始める。

ちょうど、その時間にやってくる部員が多く、みんなはエリカちゃんからボトルをもらう。だからジャグも彼女が準備していると思っているらしく、「いつも大変だね」と声をかけていく。

彼女もそれを否定せず、ただニコニコと微笑むだけ。
たった数日で、私とくるみは"後輩に面倒な仕事を押し付ける先輩"になっていた。

もちろん、それを信じている部員ばかりじゃない。
森野キャプテンはくるみから話しを聞いて事実を知っているし、その森野キャプテンと仲のいい3年生も、もちろん知っている。