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「お嬢様」

 そう呼ばれ、私は振り返った。

 どうせ、パパからの電話だとかいう報告だろう。

 溺愛されている娘、悪くはない。

 それにパパにはいつもお世話になっている。

 他人事のように言うが、実際他人なのだからそういうしかない。

「なに?黒沢」

 黒いスーツを身にまとい、すらっとした無表情のこのいけ好かない男の名を呼べばやはり私の予想が当たっていたことを悟る。

「お父様からご連絡をいただいております、いつ頃帰るのか、と」