「ここにこの公式を当てはめます、そして…」

 静かな教室内に私の声が響く。

 教壇に立って黒板に字を書きながら教えるなんて初めてのことだからちゃんと伝わっているどうか心配だ。

 ・・・なんて、考え始める午前10時。

 最初は面倒くさかったはずなのに、いや、今もそれは変わんないけど、気持ち的に余裕ができてきた。

 夏の暑い太陽の光が教室に差し込んで一部の机を照らす。

 窓も、廊下側の窓も、ドアも全て開けているというのに今もなお、首筋から汗が流れている。

 扇風機なんて役に立たない。

 せめて、クーラーは欲しいよね、絶対ここ勉強する環境にないよ。

 というか、本来なら私、普通に夏休みを過ごしていたんだけどね。

 ことの発端は海里と会った次の日だった。