「おぅ。遅くなって悪いな。」








教室に入ってきたのは、千晶。







そう。田代たちは知らないが、
カウンセリングの先生というのは
担任であり、生徒指導担当でもある

千晶だった。










『いえいえっ。忙しいですか??』






千晶は柚木の前の席…つまり田代の使っている椅子に横向きで座り、
柚木の方を向いた。







「ん、まぁな。羽川の方も、毎回悪いな。」




『いやっ、こちらこそですよ。』










この時間を提案してきたのは、千晶の方だった。






毎週欠かさずではないが、月に1、2回はこうして時間をとってくれる。









「…で、本題なんだが。…

・・・・・最近はどうだ??眠れてるか?」








千晶がちょっとトーンを下げて問う。




『はい。それなりに寝てます^^』









…………………………






何も言わずに、千晶が柚木を見る。



そのまっすぐで何もかも分かっているような目に、程なくして柚木は折れてしまう。







『・・・・・っ・・・・・


……………はぁ。



・・・・・そうですね。寝てません。』









観念して柚木がはけば、千晶も硬かった表情を少し緩めた








「最初からそう言いなさい。
みてりゃわかんだよ。」






『…はーい。』








ちょっとふてくされたように柚木が唇をとがらせるが、千晶はそのまま続けた






「・・・なんとかならんもんかねぇ。・・」







『なったらいいですよねー。』

まるで他人事な柚木に、若干呆れる千晶である。















さて。



なぜ、不眠症なだけでカウンセリングなんてするのか。






それは、ただの不眠症ではないからだ。






もちろんそれを知っているのは千晶と夕士、そしてアパートの住民の一部だけだ。



ほぼ人に言わなかったことが、
千晶にバレたのは
千晶がこの学校に来てからすぐの事だった。
















→ちょっと過去編。