「……ってわけでね、超イケメンだったんだよ!」


本屋の王子様に出逢った翌日のお昼休み、私はさっそく文ちゃんにそのことを報告した。

パンを買うために購買へ向かいながら興奮気味に話すと、彼女は少し感心したように言う。


「へぇ。ようやく菜乃も三次元に目覚めたんだ」

「目覚めたって言っても、見てるだけで満足だから」


ソウくんとお近づきになりたいわけじゃない。

彼で妄想するのが楽しいだけ。

そんなイタすぎることを思っていると、文ちゃんは不服そうな顔をする。


「つまんないじゃん、それじゃ。今度会ったらどこ高かくらい聞いてみれば?」

「えぇぇ、そんな難易度高いこと無理……!」

「だろうね」


あぅ、気持ち良いくらいあっさりと認められた。

けれど、文ちゃんは少しだけ真面目な顔になってこんなことを聞いてくる。


「でもさ、いつまでも小説の中だけで恋してていいの?」

「そ、それは……」


うぅむ……はっきりとは答えられない。

自分は自分でいいと開き直っている半面、このままじゃいけないとも思っているから。