「ここ、知ってる…」



着いたのは、とても見覚えのある場所。


暗くて、冷んやりとした身震いのする寒さと、酷く埃っぽい臭い。


所構わず、乱雑にバイクが置かれ、その隙間隙間に食べ物の空き容器などが散乱している。



全てが始まった、あたしの大嫌いな場所。


ここは、あたしが始めに葛原と契約を交わした場所。



鷹牙の総本部の倉庫だ。




「こら。急く気持ちはわかるけど、あたし達から離れるんじゃないよ」


聖也さんは、足早になるあたしの腕を掴んで自分の背後に引き戻した。


そんなあたしの背中を、光輝さんがポンと優しく叩く。


「直ぐに奴らのお出ましや。いくら一番安全な配置にいるからて、油断しちゃあかんで」


いつになく真剣な面持ちの二人に、あたしはコクリと頷いて気持ちを落ち着ける。




暗い倉庫に砂利を擦るような音が響き渡ると、現れたのは数人の黒いフードを被った男達。


鉄製のパイプを地面に打ちつけながら、恭達を威嚇するように冷たい金属音を響かせた。


「随分物騒ですね。おたくのリーダーに話があります。そこを通して頂けませんか?」