ガサガサ…


私の方をチラ見する、琉聖くん。


はいはい、早く帰る準備をしろってこと

ですね、承知しましたっ。


「一華!!」


『紗夜?!どうしたの慌てて?』


「あのね、有名人が来てるの!見に行こ

うよ!」


手を握りクイクイと引っ張る、紗夜。


『有名人?!誰なの?』


「説明は後で!!」


琉聖くんに睨まれたけど、紗夜はもはや

止められなかった。


向かった駐車場には、人だかりが出来て

いた。有名人とやらが乗っていると思わ

れるスポーツカーの運転席では、グラサ

ンをかけた美人がタバコを吸っていた。


「乙川 雷威よ!ほら、助手席見て」


『乙川 雷威って、あの陸上の?』

「そう、陸上界の王子様っ!!」


助手席には、紗夜が言った通り、王子様

というたとえがピッタリの、超美少年が

乗っていた。あれは、今年の夏の高校総

体で超高校級の走りを見せた、乙川 雷威

だ!!


「なになに、あの品格!!それに、顔が

整いすぎでしょ、ヤバイ」


紗夜ったらめっちゃ興奮してる。珍しい

な、こんな紗夜。


その時、運転席側のパワーウインドーが

開いた。グラサンを外したその人は、超

綺麗!!乙川 雷威のお姉さんかな?