「ちょっとっマジでジャマなんだけど!」 

 その声は視界の端で、右往左往している斎に向けられていた。

 時さかのぼること少し前、天気のいい日はいつものように花壇の手入れをしている斎に、昼食の時間を知らせに来たところにゾンビが現れた。
 細剣を構え、迫り来るゾンビに備える明美の側で、どうしましょうとうろたえるばかりの斎。今回も神父の力を鼻からアテにしていない明美は、悪臭を放ちながら近づいてくるゾンビに単身で立ち向かっていった。

 敵は三体。
 少数なら囲まれる心配もなく一人で倒せる。
 柄を握る腕に力を込めて切かかった。
 弾みをつけて飛び掛かる。最初の一体には高く掲げた細剣で、肩から腰にかけて斜めに切り落とした。大地に着地し、そのままの体制で二体目は腰をめがけて、右から左に切り込む。ゾンビのやわい体は簡単に二つに分かたれ、上半身と下半身を二つに切り離した。残りの一体は降ろした刃を遊ばせることなく、下から切り上げる。
 全てを片付けた明美が息を吐くころには、祈りの込められた聖剣により深手を追った三体は、塵と消えていた。

「片付いたよ」

 その言葉が合図だったかのように、遠く避難していた斎が顔を輝かせながら駆けてくる。

「凄いです! とても女性とは思えない身のこなしで」

「……それはどうも」

 日々、女らしくしているわけでもないが、非難されているようにも聞こえて面白くない。自然と口調もキツくなる。刺々しく返してくる明美に、自分がとんでもないことをいったらしいと斎はようやく気付いた。

「あわわっ決してイヤミとかではなく、心からの称賛だったんですよ!」

「そう」