絶対絶命って、例えたらこんな感じかもしれない。

「どうなってるの!」

 自分が置かれている状況に、明美が叫ぶ。
 学校を出て買い物へ行った、その帰り道。そこで事件は起きた。
 今、明美は、前も後ろも―ゾンビたちに囲まれている。

「………」

 ジワジワと迫り来る、たくさんのゾンビたち。

「こういうときぐらいしゃべったらどうなのよ!?」

 背中合わせに反対側のゾンビと対峙するいま現在、唯一の味方である和己をチラリと振り返る。

「………」

 武器を片手に、ただぼうっと突っ立っているようにしか見えない和己に、明美は苛立ちを隠せない。
 ゆらゆらと左右に体を動かしながら何体ものゾンビが、道の間で立ち往生している明美と和己に、刻一刻と近づいてきていた。

 思い起こせば、1時間ほど前。
 寝る場所を確保して、次になにをするかという話になった時、食料の買出しの話が持ち上がった。
 拠点を守る者と、買出しに行く者、二つに別れようというのでジャンケン勝負。

「じゃんけん……ホイッ」

 聖の音頭で出される4つの手。
 私(明美)パー。
 聖、チョキ。
 ひとみ、チョキ。
 和己………パー。

「あっ明美パーかよ~和己もパーか。俺もパー出せばよかったなっ! ちくしょう明美パーかぁ‼」

「パーパー、うるさいっ! アンタは頭がパーだろう!?」

 パーを連呼する聖を思いっきり拳で殴りつつ、 黙ってついてくる和己と買い物へ向かったまでは良かった。