桜の花びらが散り、新緑の季節。
鳳凰大学のキャンバス内は、だいぶ収まったとはいえ、新入生のサークル勧誘に忙しい。

初々しさの残る新入生を横目に、私は急ぎ足で大学内にある食堂へと向かっていた。
今日は薫とランチの約束をしていたのだ。
食堂内に入り、広々とした辺りを見渡すが薫の姿は見当たらない。さてはテラスの方かと足を向けると、案の定テラスからこちら向かって大きく手を振る人物を見つけた。

さっぱりとしたショートカットが、大学生になって大人びた薫にはとてもよく似合い色っぽさを増す。
私もそんな親友に向かって手を振り返した。


「薫、お待たせ」
「大丈夫だよ、真琴。講義長引いた?」
「そうなの。グループワークだったから長引いちゃった」


そう言って、薫の前に座る。
事前に薫にお昼を頼んでおいたため、私の前にはおいしそうな和食のランチセットが置いてあった。


「で、今日はどうしたの?」


私はランチセットに手をつけながら薫に聞いた。
薫がランチをおごるからと連絡してきた時から既にどんな話か見当はついていたのだが、本人の口から聞くべきだろうと返答を待つ。

するとニコヤカな表情だった薫の顔が一気に曇った。


「私……お見合いすることになった」
「へぇ」
「へぇ、ってそれだけ!?」


あっさりとした私の返事に驚いたように顔を上げる。