澄み切った青空と爽やかな風が吹く穏やかな日の朝、

ステラを含む一行がラズラエザ城を出発していた。




―二時間前―



出発の直前、ステラは亡き母・フローリアに祈りを捧げるため、

城内部にある神殿を訪れていた。



「母様。行ってまいります」



屋外に建てられた墓に吹く風で、ステラの銀色の髪はなびき、

太陽の光を反射してより一層輝きを増していた。



「ステラ」



立ち上がった直後、深みのある低い声で呼ばれた。



「父様。王妃様」


「やっぱりここに居たんだな」



二人はステラに対してどことなく申し訳なさそうな表情を浮かべていた。

ジェラール王はステラを自分の身体に引き寄せて強く抱きしめた。


「ステラ。私が在位している間は、王太子の地位はステラのものにしておくよ」



「ありがとうございます。でも……お気遣いなく。いざという時は私を切り捨てていただいて構いませんよ」



それはステラの本心だった。



「ステラ様にはフローリア様がいつもそばにいますので、ヴェルズでもきっと悪いことは起こりませんよ」



「王妃様……」



現ラズラエザ王妃はステラの義母であったが、

物心ついた頃からステラの母親はフローリアであり、王妃は既にユアンの母親だったため、

お義母さまではなく“王妃様”と呼んでいた。