ヴェルズに来て一夜明けた朝、ステラはヴェルズの女性が纏う衣装を身につけ、王の間へ侍ろうとしていた。

ラズラエザで着ていた服と比べると窮屈だったがしかたがない。

昨日から慣れないことだらけで早々に疲れてしまっていた。


「陛下。ステラ様をお連れしました」

「入れ」

ステラは頭を下げたまま王の間へ入った。

横目で見ただけでも、客間の倍の広さはありそうな部屋だ。


「ラズラエザ王国王太子。ステラ・フローリア・シエラ・ラズラエザでございます」

「ヴェルズ王国国王。ディゼル・エドガー・ジェーン・ヴェルズである。顔を上げよ」


下げていた頭をゆっくりと上げる。


「……え」

思わず驚きが声に出てしまった。


「どうかしたか?」

「あ、いえ…。もっとこう……年上の方だと思っていたので……」


ディゼルは今年で25歳。ステラと6つしか離れていない。

戦時中にエドガー王が病死して、今の王は即位したばかりだと聞いてはいたが、享年78歳の先王の息子ならばおそらく50歳前後だろうと思っていた。


しかし、目の前にいるのは自分より少し年上くらいの王。


呆気にとられているステラの様子に、ディゼルに少し笑みをこぼした。


「まあ、私は先王の晩年の子だからな。無理もないだろう。レオ、下がっていろ」