埃っぽい階段を、口を覆いながら上がり、若干錆びつつあるドアノブをひねる。そして、特に意味はないけれど叫ぶ。



「高宮~!」



給水タンクの陰に座って、ケータイを扱っていた高宮がゆっくりと立ち上がった。


日差しを浴びた瞬間、目を細めたのが大人っぽく見えた。



「声がバカでかい」


「ひどい」



不機嫌な顔の高宮に、「はい」とカップのアイスクリームを渡す。
念を押された通り、ストロベリー味だ。



「ありがとう」


「どういたしまして」



素直だな、と感心したのも束の間。ビニール袋を覗きこみ、中の物を触った高宮の顔が一変した。


そして、私のことを軽く睨みながら言った。



「…溶けてるんですけど」


「夏だからね。暑いからね」



笑顔のまま言うと頬をつままれた。