ケータイ小説 野いちご

恋する時間を私に下さい

VOL.6 私だけの時間

(『暇を持て余す』…というのは、こういう状況のことを言うのか……)

部屋の隅に置いてあるベッドに座って、私はぼんやりと壁を見つめてた。

左手にはゴム手袋をして、右手には料理本を持って、コトコト…と煮えるお鍋の音を聞きながら、ぼぅ…と壁の一点を見つめてる。


……時間ができたら…

読みかけの本を読んでしまおう。
美容院へ行こう。
買い物もしてみたいし、美味しいものも食べに行きたい!

……あれこれ、考えてた筈なのに……


(いざそういう時間ができると、何をしていいか分からないと言うか、どこから手をつけたらいいか迷うって言うか…)

せっかく自由になったんだから、もっと別のことをすればいいのに、何もやろうという気にならず、結局いつものように料理してるだけ。


……何故なんだろう。
もっと自分の時間が欲しい……と、あれほど願ってたのに……




「キャハハハ!ホントに〜⁉︎ 」

甲高いルナの笑い声がした。

緒方さんの部屋に引っ張り込まれてから、何時間も経ってる。
家に帰らなくてもいいのか…という気がしてくる。
まさか…とは思うけど、今夜もうちに泊まる気じゃないよね……


(…それだけはヤダ。今、あの子の声を聞きたくない…!)

あの声を聞くと虚しくなる。
そこにいるのは私じゃなくてもいいんだ…という気がしてきて、妙に落ち込む。

自分は緒方さんのファンをやめて、どうでもいい…と思い始めたばかりなんだから、そっとしといて欲しい…。

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