『オガタ レイ』という漫画家を初めて知ったのは……

「編集部に行った時!」
「あ、オレも〜」

アラシとトドロキが同意見で盛り上がった。

「俺はコウヤを伝って…」

セイジは言いにくそうに答えた。

「……スグルは?」

トドロキが聞き返す。

「買ってたマンガの中で見た…」


忘れもしない3年前の『新人漫画賞募集』の文字ーーーそいつに俺とレイは、同時に作品を投稿してた。



漫画を描き始めたのは、高校に入ってからだった。
勉強ばっかするのが嫌になって、急な思いつきでやり始めた。

描きたいネタは幾つかあって、始めたら止まらなくなった。

(…一度くらい賞に投稿してみるか…)

軽い気持ちで応募したのは、大学二年の夏。

自分なりに頑張って書いたつもりだったけど……


……箸にも棒にもかからなかった。

新人漫画賞に輝いたのは、『オガタ レイ』というペンネームの奴だった。

キレイな絵を描く奴で、特に人物が上手かった。
主人公のみならず、脇キャラも丁寧に描かれてる。
背景はそこまで上手くもねぇが、話は面白い。

どんな顔した奴なんだろう…って、当然興味を持った。

(イケメンだろうか、ブサイクだろうか…)

ホストのバイトをしてたから、そんな事が気になった。

…女に不自由したことはなかった。
褒め言葉さえ言ってやれば、むこうが簡単にノッてくる。

『新人漫画賞』に輝いたのが俺だったなら、今頃こんな馬鹿げた毎日は送ってねぇ。