…………身体が…すごく重かった……。


沈むように重くて……

……手足を動かそうにも、力が入らない。
……これじゃあペンも持てねぇな…と、心の何処かで考えてた…。




「礼生……」

ジイさんの声がして振り向いた。
まだ若くて、髪が黒かった。


「『OーGATA図書館』を継いでくれるか?」

始めたばかりの私立図書館のことを気にしてた。

「ヤダよ!オレはマンガ家になるんだ!」

小学生の頃からそう言ってた。
ジイさんは笑って、「そうか…」と頷いた。

「…でもな、漫画の世界も厳しいぞ。売れなきゃ埋もれる。お前は埋もれない漫画を描く自信はあるか?」

「あるさっ!ゼッテー売れるマンガ家になってやるっ!」

根拠もない自信を示す俺のことを、ジイさんは笑って見てた。

あれから何年も年月が流れて……


「礼生……お前に財産を残してあるぞ……」

亡くなる一週間ほど前だったろうか。
定職に付いてなかった俺のことを心配してそう言った。


ーーージイさんが亡くなって、形見分けの日ーーー

「孫の緒方礼生には、レトロビルの所有権と『OーGATA図書館』の一切の権利を任す」

弁護士によって読み上げられた遺言書に基づき、ジイさんからレトロビルを引き継いだ。
ビル自体は明治時代のもので、いつ取り壊すことになってもおかしくない古さだった。

でも、そこに開いた図書館には老若男女問わず、多くの読書ファンが通ってて……