それは、突然だった。





「白玖さま!天狗どもが大軍を成してこちらに向かってきております!」




蒼子は夕ご飯を、白玖は相変わらずご飯には手を付けずぼんやりと蒼子の隣に座っていた時。
慌ただしい足音と共に開かれた襖からそんな声が飛び込んできた。


その声に、白玖は感情を表に出さないまま立ち上がると置いてあった剣を手に取り腰に差した。





「すぐに行く」




短くそう答えたのを聞き、それを伝えに来た従者は短く返事をしバタバタと去っていった。
蒼子は、そんな様子を戸惑った様子で眺め持っていたお椀をそっと置いた。


この部屋で生活するようになって、初めての戦いだった。
こうして戦いが始まる様を見るのは初めてだった。




「は、く・・・?」

「うん。いってくるね。大人しく待ってるんだよ」




白玖はそういうと、蒼子を振り返ることなく襖の向こうに消えて行った。
蒼子の心には不安が渦巻いていく。