“白玖のお母さんに会いたい”




蒼子がそう言いだしたのは、白玖がまだ床に臥せっている時。
傷が癒えず、寝たり起きたりを繰り返している白玖が眠っている間に蒼子が多々良に頼んでいた。



多々良は、もちろん反対した。
しかし、蒼子の決意は固くどうしてもと引かない。



白玖の母と蒼子を会わせる。
それが、どれほど危険なことか多々良はわかっていた。


人間の事などよく思っていない白玖の母。
その上、白玖をたぶらかしたと思っている蒼子にはいい印象など端からない。



命の保証すら、できないのだ。
それを説明したうえで、蒼子はそれでも会いたいと言う。



白玖を助けたい。
このままでは、いつか白玖が死んでしまうと。



真っ直ぐな瞳で言われると、多々良の胸は苦しくなり、最後には頷くしかできなかった。




2人の会合は、蒼子の申し出により白玖が眠っているうちに執り行われることとなった。