蒼子が目を覚ますと、とても悲しそうな表情をした白玖が目に入った。
蒼子をじっと見下ろして瞳を揺らしていた。

白玖が、心を消したなんて嘘だ、と蒼子は心の中で思った。




「白玖・・・。よかった。気が付いたのね」




蒼子がそっとのばした手を、白玖は払いのけた。
苦渋の表情を浮かべ、なにかと葛藤している様だった。





「白玖・・・?」




小さく悲しげな表情で蒼子は白玖を見つめる。




「おれは・・・。悲しんだり、苦しんだり・・・喜んだりしちゃいけない。心を、捨てなくちゃいけないんだ」




拳を固く握りしめ白玖は吐き出すようにそう言った。
その言葉に、側で控えていた多々良たちも悲しげに眉を顰めた。





「それなのに・・・っ!蒼子がいたら、変なんだ。胸が痛くなったり、息が苦しくなる・・・。でも、おれはそんな感情知らないから・・・。困るんだ。訳がわかんなくなって・・・」




白玖は言いながら、自分が何を言いたいのかがわからなくなっていた。
それほどまでに、ごちゃごちゃした心をぶつけるしかできなかった。